私のからだが教えてくれたこと

日々の気付きや暮らしの手仕事のこと

傷つける人は傷ついている

note記事(2021/5/3)より転載

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私にはとても大切な友達がいる。

人生でたった20日間しか一緒に過ごしていないし歳も父親と同じだからかなり離れているのだけど、彼は私のことを友達と言ってくれるし、私は彼のような人間になりたいと思うぐらい尊敬していて(人生のマスターと勝手に呼んでいる)、何なら生まれ変わってもまた出会いたいと思うぐらい、とにかく大きな存在なのだ。

彼は何冊も本を書いていて、いくつかをプレゼントしてくれた。

私は彼の本を何度も読み返してはその度に勇気付けられている。

私がスペイン巡礼に行きたいと強く思ったのは、彼の巡礼記を読んだことがきっかけだ。

 

一冊の本の中にこんな言葉があった。

 

“人生の歩みの中で、もしあなたに微笑みかけてくれる人に出会ったなら、あなたはその人を必要としているのだ。そしてもしあなたを傷つける人に出会ったなら、その人はあなたを必要としているのだ。”

 

以前は、被害者に同情することは出来ても、加害者に気持ちを寄せることはなかなか出来なかった。

でも自分自身が病で苦しむ中、この言葉に出会った時、「あぁ、ほんとにそうだ」と思えた。

私は今まで本当にいろんな治療法を試してきた。

ちょっと怪しいと思えるものにも手を出した。本当に必死だったのだ。

当たり前だけど治療者は自分の手法に自信を持っていて、「絶対に良くなります、頑張りましょう」「3ヶ月もすれば楽になりますよ」「心配しなくても大丈夫ですよ」そう言って私を励ましてくれた。

でも、誰も私を治してくれなかった。

新しい治療に取り組む度、希望と絶望を繰り返し、そのうち私の心はどうにもならない怒りや相手を責める気持ちでいっぱいになっていった。

「嘘つき!」

「絶対良くなるって言ったじゃないか!」

「こんなにもお金と時間をかけたのに!」

ただでさえ体が苦しいのに、心は負の感情で埋め尽くされて、更に苦しくなってしまった。

でも、病気は他人が治してくれるものではなく、結局は自分で治すもので、他人はその手助けをしてくれるだけだということは分かっていた。

だから相手に気持ちをぶつけることはできなくて、ただじっと自分の中に閉じ込めたまま、ぐっとこらえていた。

その時私は心の中でめちゃくちゃに相手を責めながら、苦しくて苦しくて、誰かに助けてもらいたくて仕方なかったのだ。

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もし、また誰かを責めそうになったり、ひどい言葉で傷つけてしまいそうになる時、「今自分は傷ついているんだ、助けがほしいんだ」、そんな風に気付けたら、自分に微笑みかけてくれる人に対して素直に「助けて」と言えるかもしれない。

他人に頼ることが苦手な私にとっては少し難しい事だけど。

そして、もし誰かに責められたり傷つけられたりした時、「今この人は傷ついているんだ、助けが必要なんだ」、そう思えたら、きっと自分の目の前にある世界が今までとは違ってずっと優しくて居心地の良いものになる思う。

これも難しいことだけど。

傷ついている人に微笑みかけられるような、そんな余裕のある優しい人になりたい。